アルファ氏とオメガ氏
ども~とぅらんく文学友の会です~
この度は、昔書きましたなんとなく短編小説みたいなものを載せてみました。
「アルファ氏とオメガ氏」
空港で今、二人の画家が別れを惜しんでいる。
「なあに、すぐ会えるさ」
「そうだな、オメガ君」
「じゃあ向こうに着いたらすぐに会いに行くよアルファ君」
「待ってるからね」
そう言って二人は別れた。
オメガ氏は、飛行機に乗り込み、やがて、海の向こうに飛行機は飛んでいった。
アルファ氏は、自宅のアトリエに戻り、イーゼルに真っ白のキャンバスを置いた。
そして、絵筆を取り、キャンバスに「地平線」を描き、
地平線に消える一本の道を描いて、
オメガ氏が訪ねてくるのをじっと待っていた。
それからしばらくして、オメガ氏は、海の向こうの町にアパートを借り、
部屋の中にイーゼルを立て、その上にキャンバスを置き、
アルファ氏と同じく、地平線と、地平線に消える一本の道を描いた。
そして、彼はコートを着て帽子をかぶり、
絵筆一本携えて、キャンバスの中の道に足を踏み入れ、
地平線に向かって歩き始めた。
しばらく歩いた後、彼はお腹がすいたので、絵筆でパンを描いて、それを食べながら歩いた。
(ところで、今何時だろう?)
彼は時計を描き、眺めた。
すると時計は動きだし、時を彼に告げた。
(ふむ、一時間ほど歩いたらしい)
やがて、アルファ氏はキャンバスの地平線あたりに人影を見つけた。
アルファ氏は、キャンバスに自転車を描き、
絵筆一本持って、キャンバスの中の自転車に乗り、人影の方へ向かった。
こうして、アルファ氏とオメガ氏は再開を果たした。
二人は出会った場所に一件の宿を描き、中に入って行った。
そして、テーブルや椅子、料理、飲み物などを描いて再会を祝った。
*
「それにしても、ここの風景は貧相だな」
「そりゃそうさ、真っ白なキャンバスの中だからな」
二人は宿の窓からあたりを見回して言った。
「今度合う時にはもっと綺麗に色々描いておくさ」
こんな話をしながら、二人はそろそろお開きにすることにした。
「なあ、アルファ君」
「なんだい」
「君、僕に馬を描いてくれないかい、君の描く馬に前から乗ってみたいと思っていたんだ」
「ああ、いいとも。お安いご用さ」
アルファ氏はオメガ氏のために白馬を描いた。
「やあ、ありがとう。今度は僕のキャンバスの方にも遊びに来てくれたまえ」
そして二人は別れを言って、アルファ氏は自転車に乗り、
オメガ氏は白馬に乗って、それぞれ家のある方へ、
キャンバスの中の一本道を、帰って行った。
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